210922 女おタクの加害性について

公式アカウントのツイートを消せばその消費態度を消せると思うなよ2021

タイトルの「おたく」を「おタク」と現在ではあまり見ない表記にしたのは、中島梓の「コミュニケーション不全症候群」で用いられる「おタク」と近いニュアンスを表したかったからである。中島は宮崎勤を「おタク」として挙げており、その表記に含まれるのは他人を他人と思わずに対象としてしまう、危害を加えてしまうという雰囲気かと思う。彼女は当時のメディアにおいて「女宮崎」・「女おタク」が出現するのではないかと言われていたことを挙げて話をしている。中島は、そもそもマニア的な立ち位置こそ同じだが、性別が違えばまた活動・感情の向かい方も異なり、女性が「おタク」的になると安直には言い切れないという予見もしている。

しかし、消費者のニーズ・欲望が色濃く反映される現在の作品で好まれるのは前に挙げた記事の参邇のような過去・不幸を抱えているキャラクターが多いのではないか。恋人を過去に失っているだとか、両親に先立たれて孤児院で育ったとかそういった設定があり、それでもなお葛藤し自身やそのパートナーとの未来のために奮闘するそういったエピソードが大量に生まれて消費されている。こう書いている自分もやることだし、実在しないキャラクターをそういった「萌え」の対象とすることはわたしにとって気になるというだけで、本当はさして批難するべきことではない。ただ、これが実在の人間を感動的に仕立てて、社会構造の問題であるならばその解決を目指すわけでなく、ただ自分の立場を確認して安心するだけに留まるとかであれば、そういった行為には関心に見せかけた無関心・極端に言えば加害の可能性があることを気に留めるべきではないだろうか。

一方、最近では消費者側の考え方にも変化が感じられる。ジャニーズの若手(ジャニーズjr.~デビュー5年目程度まで)が自身で演出・振付を行う際に多く見られた「脱げばいいだろ」・「腰振ればいいだろ」的なパフォーマンスに対して不要だという意見が散見されるようになった。当然自分の知る範囲での話なので、バイアスがかかっているということは想定できる。

しかし、この消費者の「消費している罪悪感」に対し、タレントたちは案外鈍感なのかもしれない。関西ジャニーズJr.が発売したコンサートグッズとして、本人たちのぬいぐるみが販売された。このぬいぐるみは、洋服を脱がせると男性器が付いているという仕様だったため、賛否が分かれた。その仕様はもちろん(一部の)消費者側の欲望を考えたうえで提案・採用されたものだと考えられる。本人たちも当然グッズの企画には携わっており、仕様についても了承していることかと思う。しかし、不愉快だと思う人間がいたとしても、望まれているはずだから採用したいと説得されればそれまでである。パッケージングされて売り出されるアイドルたちは何が自分たちに望まれているのか、たとえそれが自分の気持ちを害するとしても、受け入れて振る舞わなくてはならない。

韓国アイドルのファンメイド(fan-made)のぬいぐるみでも同じような出来事があり、それはまさに消費者の欲望を消費者が叶えた形だ。こうやってまとめている間にも、渋谷のスクランブル交差点に面したTSUTAYAの書籍販売コーナーに、ジャニーズの上裸のポスターに疑似的な汗(霧吹きの水)をかけて拭ける展示を行うというツイートがあった。

相手が男性ならいいのか。売り場の担当者が社員かアルバイトか知らないが、男女問わず他人の身体をまずエロく消費しようとするな、いい加減にしろよと思って、インターネットに載せるつもりのなかった文章を公開してしまった。

アイドル本人が自分が時間とお金をかけて鍛えた肉体を見せたい、誇りたい場合に、本人がその気持ちを表明してくれれば全然文句はない。(ただ、特に芸能人・アイドルという立場の人間の場合、本人発信の言葉がどこまで本人の気持ちを反映しているかというのは、ほぼ本人以外知り得ない。そもそも他人のことは、絶対に表面に出てくるものでしか判断できない。)しかし、同じ所属事務所・似た立ち位置の人間でそれが嫌な人間もいるかもしれない。そういった人たちが同じように振る舞わなくてはならない状況が生まれないでほしいと思う。どんな立場の人間であっても、どんな職業でも、自分が不愉快だと感じることを不愉快だと表明することは悪ではないはずだ。