2022/4 FLOWER DRUM SONG

4/24-27 日本青年館ホール

 

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お気に入りは分かりやすすぎるミュージカルナンバー、Grant Avenue!

Flower Drum Song (The 2002 New Broadway Cast Recording)

Flower Drum Song (The 2002 New Broadway Cast Recording)

  • Rodgers & Hammerstein, Lea Salonga, Jose Llana & Sandra Allen
  • ミュージカル
  • ¥1528

原作の日本語訳自体が出版されてるのか不明で、とりあえず背景を拾うかと思って読んでいる。

山下清海・サンフランシスコにおけるチャイナタウンの形成と変容-ゴールドラッシュからニューチャイナタウンの形成まで-

http://www.geoenv.tsukuba.ac.jp/~chicho/hugeo/37/02.pdf

舞台がサンフランシスコ・チャイナタウンというので見つけた。そもそもどうして登場人物たちはアメリカに移住したんだ?というのがぼんやりとしか分かっておらず、作品の年代と移住初期とは違うのだけれど、チャイナタウンのルーツはゴールドラッシュ・大陸横断鉄道の敷設!世界史でやったやつだ!と思い出せてかなり楽しかった。しかも世界史でやるよりも、当然焦点が当たる部分が狭く、細かく説明がある。こういう論文が世に出ているのは非常に助かる。ありがとうございます。作中のナンバーの名前の由来も解明された!

雑感

上演記録が全然ないのは、キャストをアジア人で揃えなければならないというオーダーがあるかららしい。納得。日本にいる日本人にはあんまり想像がつかない出来事なのかもなとも思う作品。日本人も大別してしまえば肌の黄色いアジア人だけれど、その意識がある人間て少ないんじゃないだろうか。わたしもアジアから出たことがないので、差別に遭遇したことはないけれど、アメリカでの話は聞いたことがあるし想像はできる。

世代間の隔絶・男女の隔絶・移民してきたばかり⇔アメリカナイズされたという対比と隔絶…たくさん考えることがあった!宗教とかアイデンティティに関わる部分を国で(おおまかに言えば)共有している場合だと、違う国で長いこと育った人間というのはもう、両親が自分と同じ国(作中で言えば中国)出身だとしても全然外国人だよなと思う。作中のターの衣装にも、ふるまいにも表れているように。そうなると国家って?国籍って?という話にもなってくるし、最近起きていることにもつながるなと思う。パンフで演出家の上島さんはじめ、キャストもそれとなくそういった話をしてくれていてわたしとしてはうれしかったし、救われた。極論、自分が世界のためにとか平和のためにとか何かするとしたら俳優を追いかけて舞台に何万円も出している場合ではないし、最近はチケット買うのも少し後ろめたくて、でも観たいから……とハイになってごまかしている。自分がすっかり自分以外のために生きられたらよかったのにと思うことが多い。下手に自分のことを大切に思ってしまうことが嫌だなとも思う。でもこうやって考えるきっかけになったというのは、それはそれで少しは観てよかったことなのかもしれないという救われ。

衣装がかわいい!ショービズが軸になってお話が進むので、リンダのショーの衣装だけでもうめろめろめろ…。京劇の衣装も登場する。それも華やかでかわいい。メイ・リーのチャイナトップスも種類が色々あって見るのが楽しかった!

セットもかわいい!クラブチャプスイに改装されてしまってから、提灯が下りてくるのが好きだった。あとやっぱり電球色+紫の照明が好きすぎ……劇中でショーがあるときって大体使われる色の組み合わせだと思うのですが、かわいいな~と思ってみていた。

砂川さんは最初のセリフのインパクトが強くて、というか逆接前までの言葉選びが(事実を描写しただけなんだけど)強烈。不法移民ってどういうことなのか示すいいセリフだな~と思っていた。役以外でもアンサンブル的に出てくることがあって、なんかこのご時世、なるほど…と思った。カンパニーの人数が増えるとそれだけリスクも増えるのを見越しての演出≒キャスティングなのでしょうか…?

踊るところだと泰江くんがいるんですが、も~本当に身体の使い方がきれいだな~と思っていた。中島健人のダンスが好きなら泰江くんのダンスも好きなことない?!わたしだけかな……。男性アンサンブルの岡崎さん森内さん(不在になってしまったけれど荒木さんもきっと)ダンスがうまくて楽しい。特に岡崎さんが好き踊りだったのですが、THE CIRCUSに出てたらしい。オチ?というかふぉゆが舞台・ミュージカル方面で色んなひとと共演しまくっているのが今回よ~~くわかった。

チャオ青年はたぶん小作農だっていう自分の身分に対して結構卑屈なんだけど、それを前に進む力にできる人間なのもありつつ、アメリカかぶれで中途半端なターにイライラしているのが人間くさかった。彼が香港に無事渡れたのか、その後どうなったのかが気になる。

わたしは終始ターにイライラしてて、本当にそれでいいのかメイ!!!だったんだけど、苦悩やすれ違いもありつつ自分が大切にしたいものを重んじてくれた人間を信じる…ということなのかな。ターもメイも、お互いがいたらアメリカでチャイニーズをやることができると思ったのでしょう…。でもメイが途中で言う「あなたは自分と一緒にいると自信が持てるかもしれないけど、自分はその逆」みたいなのってかなり重要じゃない?そこの乗り越え方って答え出てなかった気がして気になりました。あと芸術をテーマにすると絶対に出てくる男性にアイデアを与えるミューズ…みたいなのが得意ではなくて、出会うと、あ~……と思うのですが、振り返るとこのお話もそういうところがあったかも。メイのアイデアで一山当ててるし……。

あらすじだけだとリンダvsメイという感じなのかと思っていたら(そもそも公式サイトのあらすじが分かりづらい)、全然そんなことなくてメイのアメリカでのお姉さんみたいな立ち位置がリンダだった気がする。LA行きを決めたリンダがターと話す場面で、どうして白人の男と付き合うんだと聞かれて、元いたところに戻れなんて言わないからって答えていたと思うのですが、これって国のことなのか、彼女の(伝統の理不尽さに怒る)態度のことなのかどっちだろうと思った。

たくさんディスカッションをして作品を作りました~というのをカテコでもパンフでも知り、演者が役や作品のことを理解するには必要な過程だと思った。現代劇でもなければアメリカ・中国単体の話でもないので余計に。きっと楽しい作業だろうな~と思う。自分は原作や取扱われる題材にできるだけ触れてから映像なり舞台なりを観たい人間になったし、その過程で知らないことを知るのが好きだから…。

友人と観る予定だったのが潰れたのと、みられないキャストがいたのが残念でした!仕方ないね……。入ったのは東京のみですが一応大千穐楽に合わせて公開。お疲れさまでした!