舞台・Solliev0(ソッリエーヴォ)雑感

そりえぼ・クラブeX

 

期待値を上回っていろんなこと考えたしおもしろかった!ただこの作品はほんとにただ"俳優"が好きで観に来るよりは、世にあふれている"物語"全般が好きで観に来る方が楽しいだろ!とは思う。ドラマこそポスターのおふたりの愛憎……って感じだったのに、初見では「バイオレンスアクション任侠」→2回目からはもっと広い愛の話だったと思った。わたしは舞台から登場の悠人と冬真にめそりめそりとなり、ドラマで描かれた新田と冬真の様子から披露した推理が当たりご満悦、ご満悦だしそれを軽々と超える良すぎ場面があったので、ほさかよう、神~~~しか言えなくなった。アホ?

千大から勇実に対する怒りだって愛だし、楓から春陽への真摯な謝罪だって愛だった。愛って対話を諦めないことなんだなとここ2組の関係を観てて思った。

→御子柴兄弟/天月の義兄弟/悠人と冬真 ここ3組の対比がすごく好き。

御子柴兄弟は千大が諦めないし、勇実も新田の部下(西沢)が言うには「ヤミ金に手出して家族も危ないかも」、だから鉄砲玉もやるって言ってたらしいので手段こそ誤ってるけど弟(ないし家族)を思ってのことだって分かる。し、新田はこれを確かめてるのもいいなーーと思うのです。冬真の意に沿わないキャスティングをしてしまった理由を知ってせめて納得しようとしてるんかなと思う。

悠人と冬真は施設にいたときは兄弟みたいだったらしい。時を経て再会した冬真が人を殺してる・そのために拳銃を所持してる(冬真は悠人の話を聞いてる間スーツの内ポケットに入れた拳銃に手をかけてるんだよ〜…)って分かってもなお他人である冬真の言うことを信じるっていう悠人のことを冬真は必要としてない。他人だから…………。それでも悠人は最後まで諦めてなくて自分にはどうあがいてもできない"弟"の役割を負える春陽に会いに行くんだよ〜T_T。おい、冬真。

悠人ってけっこうふわふわした甘い若者って感じで登場する割に胆力がありほんとに好き。泣いてるだけの人間にわたしは共感も同情もできないけど、悠人はそうじゃない。ちゃんと自分が何をしたら相手のためになるのか考えて行動できるので好きだしかっこいい。

悠人と冬真を観ていると、愛は枷なんだなと思う。冬真も最初は悠人の前でいいお兄ちゃん"役"をやろうとしている気がするし、背負っちゃったな~って顔をしている気がするので。でもこの感じ方って今NO.6読んでるからかもしれない!!恥 わたしは冬真が好きだからこそ(舞台で冬真のことちゃんと好きになった)、冬真を助けたくて怖くても臆さず冬真や春陽に向かっていく悠人が好きだよ~~T_T。悠人、冬真に人なんか殺してないぞって言ってよって語りかける場面で全身使って表現してくれるのがすごく好きだ。愛は注いだ分自分に返ってくるんだよーと思うが、冬真は別にそれは要らないんだ。はーーーあ…。

品川クラブeXの看板とブロマイドの写った写真。左:春陽・冬真/右:悠人・冬真

右がわたし。

愛はひとりよがりなんだな~っていうのは春陽と冬真をみてて思った。ラストの「理由なんかお前が決めろ」(※ニュアンス)てセリフがちょ~好き。物語文の読解で得点することに気を取られてきて、人間の感情にも行動にも分かりやすい理由を求めてしまう癖がついてるからこそ、わたしたちは「他者と完全に分かり合うことはできない」、「相手に短絡的に動機を求めてはならない」、「相手の手を離れたボールをどう受け取るかは自分次第」だっていうことを忘れてるのかも。

冬真単体に注目してると愛ってしょーもない、くだらねーなって思う瞬間がある。でもそのくだらないことで人間は泣いたり笑ったりするし、冬真はどう動いたらいいか分からなくなって揺らいだりしている。色々おもしろポイントは個人的にはあるんだけど、総合すると人間って愛しいな~~って思う作品だった。

舞台版のキービジュもドラマの展開も平成すぎる!って言ってたし、まあ舞台版の内容もWILD ADAPTER(舞台は90年代末)*1みたいなとこあるので(?)こんなにしみじみ感想書くとは思ってなかったよ!(笑)

わだたくまさん(とそめさま)が酷使されている。こちらは楽しいですがめちゃくちゃアクションしてて大変。すまん。アクション観たいって言い続けている責任をちょっと感じている。ほんとにわだたくまさんの骨と顔が好きすぎて毎回骨と顔が好きすぎる…と思っているとドラマのおさらいシーンが終わっていた。登場するたびにガチ恋ではないのにこれが流れる。

顔も!声も!めっちゃストライクっ!!

骨と顔が好きって言ってるけど、なんてことないお芝居も好きだなあと思うとこがけっこうあり、やっぱてんごじゃなくておもろいオリジナルに出てくれみんな頼むよんと思った。新田から拳銃を受け取る場面で、あ、このひと拳銃で頭撃ち抜いて死ぬかもしれん…と思ったんだけどほんとにそうなった。絵面としてかなり見たいという願望だったんだけど、みんな同じこと考えてるのかも?

冬真の出る場面で印象的だったのって新田とのやりとりだな~~~わたしは。好きでした。春陽のことを一緒に殺そう、おふくろさんの仇とろうって新田に拳銃握らされて春陽に銃口を向けてるとこが鮮烈。いくならおなじ地獄やね、って思った。天国にはいけない2人だーー。そこに至るまでに怯えてるのもすごく好きだった。きっと新田は頭ぽんぽんするのを筆頭に、ずっと冬真のことを小さい子どもだと思ってて、自分のコントロール下に置けると思ってるんですよ~。はあ…evilすぎるけどすごく好きだった。物語のモチーフとして大人に「子どもである/大人になる」ことを要請されるっていうのが好きだ(興味を持っている)から好きな場面だったんだろうと思います。てか谷口さんもうまいんだわ(完)。新田が冬真に飯作ってくれって言って冬真がそれにハア?って言うとこから嘘だよ、酔っ払いの言うこと真に受けんな、って言うとこと、ここがほんとに好きで毎回どきどきしている。ただただ谷口和田の2人芝居がめっちゃ好きなひとじゃないか?

→平日公演余裕なさすぎ予定だったから取ってないし入らなかった間に谷口さんの芝居がバカバカバカシリアスになっており(うれしすぎ)、超最高になっていた。和田さんのお芝居もなんだかけっこう冷徹に振れてたのから冬真を駆り立てた元々の優しさも垣間見える感じになっており、いいなーーー…と思っていました。わたしはドラマから冬真の義賊的性格に、本人の過ごしてきたようなことを他の人間には経験してほしくないって思いにほーーん…って思ってて、彼の凶行にもまあ分かるし好きだなーって観てる身だった。突き詰めて考えていくとマジで悪って殺すしかなくね?と思うんだよ…。だから粛清に走る冬真のことは全く否定できないし憎めないです。好きなセリフは「誰がドブさらいを~」っていうの、冬真のことが大好きだな~~~って思った。初見のとき他の場面では笑い死ぬかと思ったりしたのですが(展開がおもろいので)、ここだけはぐっときてちょっと泣きそうになった。

ほさかさんのしっかりしてるとこなのかな?と思ったけど、新田が代議士を詰める場面で「有権者は」って言うのが好きだったな〜、代議士にとって重要なのは漠然とした世間じゃないんよね。あの場面は、新田と冬真がたぶん同じ方向を見られてる最後って感じの場面なのもあり好きです。冬真が及川を銃殺して撃ちすぎてるとこで完全にあそこ2人の関係はブチ壊れてしまうのですが……。蛇足だけど、東堂が春陽に株くれって言うのも経営の立場に就きたいという点で楓に人事権を掌握しろって言ってる人間であれば、かなり分かりやすく正しい要求で、こういう細かいとこにストレスがないのってうれしいなと思っていた。

余談ですがほさか演出で場を華やかにするみたいなののレパートリーがダンスが人が死ぬか殴り合いかしかない、みたいな話を友人から聞き2/3使っとるやんけ──となりました。指輪贈呈のとこで白照明全開になるのを確認してかなり笑った。わたしは春陽の母が突き落とされた回想の階段と照明の使い方が好きでした。あと混色がきれいだった。暖色の光とエメラルドグリーンで日常の場面を作るんだっていうのがおもしろかった。

正直春陽と冬真の関係って途中からもうフラグが立ちすぎていてそうやね、と思うしかないし見通せた結末でもあるのであんまり特筆することはないのかも。飛び道具なしで春陽を殺すことができるのってもしかしたら冬真だけなのかもしれんなー、生きるも死ぬも相手次第ってこと…ふーん……と瑛士と千大を吹っ飛ばす春陽を見てて思った。

「春陽と冬真」にガチで興味がなくて、「冬真対○○」で物語を読んでいたので異常。まじで一生単推ししかできない*2。春陽は傷害罪、自殺幇助で服役してて〜ってのがラストだと思います。マジレスすぎる。そんであんだけ派手に人が死んで、ちゃんと新田が埋葬されたってことは冬真がやってたことの背景も詳らかにされて天月のほんとの企業改革が楓のもとでスタートしてるんだろうなと思います。刑事物真剣部?

最後は銃声→暗転→血糊ついたままカテコでいいんですよ…と思ってしまう。おもんない話をすると、最後5分はほさかさんからうちらへの救済(ソッリエーヴォ)ってこと?となる。糖度★★★★★と任侠映画が交互に行われ、後半のテイストが完全に任侠映画なので頭が切り替わらなくて暗転を望んでしまう……。そっちのがきれいかな~~って思ってしまった。でも後日談が描かれることで残された人間たちの生活が続いてくっていうのが分かって、また割と淡々としていていいんですけどね…。

パンフの前半はいろんなとこで話してる内容だったんだけど、後半はバッドエンドとハッピーエンドどっちが好き?みたいなノーテンキな質問に主演2人とも物語の要請に応じて…みたいなのとかはっきりどっちかっていうより微妙な感じのが…とか答えててうれしかった(?)です。そりえぼ、そういう話だったし。

2024年の夏がそっりえーぼでよかったな!こんなににこにこしながら観られる(主観)おもしろい作品でよかったよ〜!わたしはへらへら観てた人間だからダメージがそんなにないと言えばそうだけど、物語で人が死ぬのに慣れすぎていて感覚がおかしくなってるのかも……とパブサしててけっこう落ち込んだ。己の人間性の薄さに…。わたしは最後まで悠人が冬真の手を引いてくれるかもしれんと思ってたから、終演後更新されたふーたのブログ読んで、ね~~T_T…って思っていた。愛せる人物たちと見ごたえのある芝居・アクション、ありがとうございました!

*1:

WILD ADAPTER - Wikipedia

*2:アイドル追ってたときも単推し傾向だった